目次
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  1. 1. 自由過ぎる⁉︎ 日本の地下鉄
  2. 2. 勝手に扉が開くタクシー
  3. 3. 「マブダチ」と「友人」

日本映画が好き。アニメが好き。日本語が大好き。
さまざまな理由で母国を離れ、日本語学校に通っている留学生たち。
来日して彼らが遭遇した、謎のルールや言葉づかいとは?
「マブダチ」ってなんだ? 「ごめん」を「ください」ってどういう意味……?
外国人から見た不思議なニッポンとは。

<インタビューに答えてくれた人>
●VU NGOC BACH(ヴー ゴック バック)さん
24歳 ベトナム・ハノイ出身。昨年10月に来日。

●河性伯(ハ ソンバク)さん
25歳 韓国・ソウル出身。去年8月に来日。

●魏玉潔(ギ ギョクセツ)さん
24歳 中国・北京出身。今年7月に来日。

自由過ぎる⁉︎ 日本の地下鉄

まず最初に、皆さんが日本に来た理由を教えてください。

ハさん「中学時代の担任の先生が日本語の専門だったんです。
その先生に日本語を教わるうちにどんどん楽しくなり、留学しようと決めました」

魏さん「私は昔から日本映画が好きで、大学入試が終わったあとの長い夏休みを、すべて日本語の勉強につかいました。
その時はまだ、日本に行きたいとは思っていなかったんですが、大学を卒業後、北京市内の図書館に勤めた時、館内にたくさん日本映画があって、もっともっと(邦画を)観たいと思うようになり、今年7月に日本に来ました」

バックさん「私はガンプラが好きで、ホビーやフィギュア、その原型の3Dを学ぶ専門学校に入学したいと思い、日本に来ました。ガンプラはイマージュがとても自由で面白いです」

日本へやって来て、一番驚いたことはなんですか?

魏さん「地下鉄にセキュリティがないことが、すっごく不思議でした。
中国(北京)では、空港と同じようにみんな並んで荷物も体もチェックを受けます。
北京オリンピックの前に一気にそうなったんですが、今ではごくふつうの景色です。
もしお水を持っていたら、危険物ではなく飲み水だと証明するために、一口その場で飲まなくてはいけません。中国はだんだん厳しくなっているので、日本ではまだそんなセキュリティがないことに驚きました」

なんと! 逆に日本人が北京に行ったら戸惑いますね。

 

勝手に扉が開くタクシー

ハさん「私は、タクシーの扉が自動で開くのにビックリ。
乗ったら料金がすごく高くて、またビックリ」
バックさん「私はゴミの捨て方です。ベトナムでは、全部一緒にまとめて捨てます。
アパートで同じように捨てていたら、管理人さんに『ダメですよ』って叱られて。色んなことを覚えなくてはいけません。
新聞は燃えるけど、燃えるゴミではなくて、リサイクル。ペットボトルはキャップをはずしてぶっつぶす、とか」

ぶっつぶす(笑)。日本に来て、日常の会話で戸惑ったことはありますか?

魏さん「あります、コンビニに行って、お弁当を飼った時に『あたためますか?』と聞かれて、私はいつも『大丈夫です』って答えるんですけど、店員さんによって、あたためる場合もあるし、あたためないこともあって。
毎回、どう答えれば良かったんだろう? って悩みます」

今日のお弁当はあったまって出てくるか常温か……。小さな賭けですね。

バックさん「私も牛丼屋のアルバイト先でわからないことがありました。
店長が来た時の、決まりのあいさつです。『店長、おはようございます。お元気ですか』と私たちが言う。
すると、店長は『おはようございます。おかげさまで』と答えます。
なぜ、今来た人に、お元気ですかって聞くのだろうと、インターネットで調べたけど、わかりませんでした。
それと大きな声で、『いらっしゃいませ』って言わなくてはいけないのも、メンドクサイなあと思いました。
ベトナムの飲食店はすごく忙しいし、そういう言葉(自体)がありません」

「マブダチ」と「友人」

日本独特のマニュアル文化と曖昧なニュアンス。日本人でも悩ましいです。

ハさん「私が何だろうと思ったのは『マブダチ』という言葉。
人に聞いたら『友人のことだよ』って。
じゃ、最初から普通に『友人』でいいんじゃないかなって。後になって、友人の中の友人という意味だとわかりましたけど」

マブダチ、またはダチとも言います。他にも何かありそうですね。

ハさん「バイト先にお客さんが来た時、『ごめんください』って言われて、悩みました。
ごめんを、ください? 『ごめん』、私持ってない……って」

―――― 一同 笑い

ハさん「職場では、これまで勉強しなかった日本語にたくさん出会います。拝見しますとか、ご覧くださいとか。敬語とか謙譲語も、『お』をつけたり『ご』をつけたり。
もうぜんぜんわからない。全部覚えるしかないかって思っています……」

(後編に続く)


インタビュー : さくらいよしえ  / イラスト : 溝口イタル